新キャリア教育システム導入

インパクト体験を共有して未来を創る力を育てる プログラム開発協力:立教大学 経営学部 特任准教授 高橋 俊之氏に聞く

高橋俊之氏

高橋俊之(たかはし・としゆき)氏/立教大学経営学部特任准教授。情報機器系企業、教育機関などを経て、2005年、「SCHOOL OF 未来図」を立ち上げ、論理思考を学ぶクラスや企業研修を展開。立教大学では「論理思考とリーダーシップ」のコースリーダーを務めている。一橋大学法学部卒、ミシガン大学経営大学院修士課程(MBA)修了。

淑徳与野中学・高等学校では、2015年度から新たなキャリア教育システムを導入しています。一般的なキャリア教育とは異なり、自分の強みや想いを掘り下げながら、社会との関係のなかで自分の未来を切り拓く力を育むことを目的としています。プログラムの開発にあたり全面協力をいただいた高橋先生に、キャリア教育に対する考え方や導入に向けての手応えと今後の展望を伺いました。(聞き手:淑徳与野中学・高等学校 副校長 黒田貴)

医師・教師・アナウンサー……。
半数以上が人気職種を目指す?

黒田 本校では新入生のオリエンテーション合宿(4月)で『ドリームワークショップ』というグループワークを実施しています。これは自分の夢と、その夢を持ったきっかけについて話し合うというもので“自分は何のために勉強するのか”を確認してもらうとともに“淑徳与野での6年間をどう過ごすのか”という決意をクラスメイトと共有することを目的としています。

高橋 とても良いことですね。

新入生のオリエンテーション合宿(4月)で実施。出会って間もない生徒たちが、お互いの理解を深めると同時に、これから6年間の過ごし方を考えるきっかけになります。

黒田 ただ、「夢は?」と尋ねると、答えはどうしても「職業」になりがちです。しかも人気職種が偏っていて、医師・教師・アナウンサーの3職種を希望する生徒が全体の6割に達したクラスもあります(笑)。

高橋 それは大学生でもあまり変わりません。社会的に高い評価が得られる職業、注目度の高い仕事にとらわれがちです。私が教えている経営学部ではコンサルティングに進みたいという学生がよくいるのですが、本当にコンサルティングを「やりたい!」と思っているのか、単に社会的なステイタスに惹かれているだけなのか分からない学生もいます。これは、ビジネススクールなどで学びながら転職や起業を目指す社会人でも同様のことが言えますね。

黒田 高橋先生は「論理思考」が専門で、大学でリーダーシップ・プログラムを開発されてきたということですが、キャリア教育に携わるようになったきっかけは何なのでしょうか?

高橋 学生の「学ぶ動機」を高めるのが目的でした。今の学生はとても真面目に勉強しますが、それでも、日々の仕事の中で感じる課題を解決する目的を持って学ぶ社会人と比べると、真剣さや切実さの面で物足りないと感じていました。そこで彼らの最大の関心事であるキャリアを題材に論理思考を学ぶ場を作ることで、動機向上とキャリアの明確化の一石二鳥を図ろうと考えたのです。学習には良い教え方、良い学び方も必要ですが、同時に一人ひとりの努力が欠かせません。その努力の総量は「動機の強さ」によって決まるのではないかと考えているからです。

黒田 しかし、将来の職業に対する単なる憧れや社会の評判だけでは、学びの動機としては弱い――。

高橋 その通りです。心の奥深く、マグマ溜まりから噴出するようなものであるべきです。

黒田 希望する職種名をあげることはできても、その職業や仕事に心の底からなりたいという強い想いを持っている人は少ないということでしょうか。

高橋 はい、これは、彼らが「何をしたいか」よりも「何をしておくべきか」を優先する教育を受けてきた影響が大きいと思います。しかし実は、そういう人たちでも「どんな社会を実現したいか」「誰を応援したいのか(共感するのか)」は持っています。そのマグマ溜まりを探り当てる方法として、大学の授業に採り入れているのが「インパクト体験棚卸し」というプログラムです。これは自分の人生で体験した出来事のなかで特に印象に残っていること、自分自身の行動や考え方に強く影響を与えたと思われる出来事(これらを「インパクト体験」と呼んでいます)を振り返ってみるという作業です。今回、淑徳与野の先生方にもトライしていただきましたね(笑)。